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rMSSDって何?

みなさん,心拍ゆらぎの解析したことあるだろうか?いろんな方法があるんだけど,RMSSDは割りと簡単に計算できて,広く使われるメジャーな心拍ゆらぎ評価法だ。

・RMSSD(ms)連続して隣接するRR間隔の差の2乗の平均値の平方根であり、迷走神経緊張強度の指標(http://www.trytech.co.jp/checkmyheart/glossary.html)

・…その他の時間領域解析としては、連続した心拍間隔の差の二乗平均平方根 (rMSSD)があり,(中略)心拍関係の副交感神経活動との関連が認められます。(http://www.qhrv.jp/dt_hrv_jp.htm)

などとある。つまり,RMSSDは,副交感神経がどの程度活動しているかの指標として用いられる。通常は,「自律神経系に異常がないか?」といった視点や「ストレスによってどれくらい副交感神経活動が抑制されるのか?」といった視点で,従属変数として用いられる。しかし,近年は逆の発想で,「RMSSD(副交感神経活動)が高いひとは,いろいろな課題のパフォーマンスが良い可能性がある」という視点で,独立変数として用いられる研究があり,ちょっと面白い。

たとえば,RMSSD高者とRMSSD低者(どちらも軍人)で,反応時間課題のパフォーマンスを比較したHansenらの研究(2003)では,RMSSDが高い人のほうが,反応時間が短く,正答数も多いという結果になっている(上段反応時間(値が低いほど速い),下段正答率)。

p1 p2

で,僕はこれから禅を行っている方々の心拍をはかり,ゆらぎを解析予定なのだけれど,さしあたって一番メジャーかつ簡単そうなRMSSDを自分の心拍で計算してみた。計算方法は,BIOPACの解析例ページが非常にわかりやすい。もう,下のエクセルだけで十分という感じだが,詳しく説明すると,下記のようになる。

1.IBIを計算する(AB列)
2.一拍先のIBI-現在のIBIで,IBIの差分値を算出する(C列)
3.IBI差分値の2乗を求める(D列)
4.IBI差分値の2乗の合計値を求める(E列)
5.さらにそれをサンプル数で割る(F列)
6.最後にルートをかけるとRMSSDになる(G列)

rmssd-excel

で,かねてより生産していた計測器をもちいてIBIを計算し,立位(アトリウムをウロウロ歩きまわる)と,座位(リクライニングチェアでネットサーフィンする)を比較してみることにした。どちらも1000拍ぶんIBIを測定したので結構時間がかかった。下記は,上段が立位のIBIで,ときどきRを逃しているので(青い縦線の位置)IBI計算後に修正した。下段は座位のIBIで,こちらはじっとしてたせいかIBIを逃している場所は少なかった。一見して判ることは,立位はIBIが低い(つまり心臓が速い)状態で,座位はIBIが高い(つまり心臓がゆっくり)状態であることだが,それだけでなく,座位のほうが細かな上下動(呼吸性のゆらぎ)が多く現れている事がわかる。このようなゆらぎがRMSSDとして評価されるわけだ。

w s

で,BIOPAC方式のRMSSD計算法で,立位と座位のRMSSDを計算してみる。ついでに心拍数も計算してみた結果が下記のとおりだ。座位のほうがRMSSDが大きく,HRも低い。HRは交感神経活動と副交感神経活動の双方の影響をうけるが,RMSSDは冒頭で述べたように副交感神経活動との相関が高い事がしられているため,HRとは別に副交感神経活動の指標として個別に分析される事が多い。さしあたっては仮説どおりの結果で一安心。

rmssd

・・・僕のRMSSDは高群かな,低群かなー・・・。上記RMSSDは秒で計算されているので,1000倍すれば,ミリ秒単位になり論文と比較できる。僕は50くらいかな・・・座位=安静時に50だから,LOW HRVグループの平均値くらいだな(下図参照),これでは海兵隊で活躍できそうにない(T_T) いやまてよ,この実験のサンプルって・・・・平均年齢23歳とある。分かった,きっと歳のせいだ(というのもHRVは加齢によって低下していくのだ)。 まぁどのみち海兵隊では活躍するのは無理ですね。

mean

計算に用いたエクセルファイル:rMSSD