BGM相関,言わずとしれたbrain–gut–microbiome axisだ。腸と腸内細菌の知識をつけて,脳の働きを良くしようという研究会である。1)できるだけ多く発酵性食物繊維を摂取して,2)脳内の炎症を減らし,3)昼間の脳の働きを最適化する,のが目的だ。食物繊維の多い食事をとり脳機能を最適化することは,勉学・研究に従事する者の基本的権利であり,大義ですらある。
Horn, J., Mayer, D. E., Chen, S., & Mayer, E. A. (2022). Role of diet and its effects on the gut microbiome in the pathophysiology of mental disorders. Translational psychiatry, 12(1), 164.
1.全体のテーマ
脳-腸-マイクロバイオーム系(BGMシステム)は,神経・内分泌・免疫経路を通じて双方向の通信を行う統合ネットワークであり,その調節に食事が重要な役割を果たしている。特に食物繊維やポリフェノールなどの成分は腸内細菌によって代謝され,酪酸などの抗炎症作用を持つ代謝物を生成し,精神健康に良い影響を及ぼす可能性が示されている(Role of diet and its effects on…)。
2.疾患ごとの食事介入効果(表1,p.2)
うつ病:地中海式などの植物中心の食事が症状改善に有効とする介入研究が複数報告されている。不安症:性別によって効果差が示唆され,女性を多く含む研究では有効性が確認されている。パーキンソン病・認知症:地中海食やMIND食が症状進行の遅延や認知機能維持に寄与する可能性がある。ASD(自閉スペクトラム症):小規模研究においてグルテン・カゼイン除去食が改善に寄与する可能性が示唆されている。てんかん:ケトン食が薬剤抵抗性てんかんの発作頻度を減少させる可能性がある。
3.BGMシステムの具体的な経路(p.3–5)
神経内分泌経路:腸内細菌がトリプトファン(Trp)を代謝し,セロトニン,キヌレニン,インドールなどの神経活性物質を産生する。免疫経路:LPSなどの微生物成分が炎症性サイトカインを誘導し,脳内炎症を惹起する。短鎖脂肪酸(SCFAs):特に酪酸(butyrate)は腸内環境のバリア機能を高め,抗炎症作用をもたらす(Role of diet and its effects on…)。
4.食事と脳機能への影響(p.5–6)
健康的な食事は,腸内バリア機能の強化,セロトニン分泌の促進,オメガ3脂肪酸やビタミンB群などの微量栄養素の供給,慢性炎症の軽減に貢献し,精神疾患のリスクを低減させる可能性がある。
5.研究上の課題と将来の方向(p.9–10)
多くの研究は観察研究であり,因果関係はまだ確立されていない。RCT(ランダム化比較試験)は少数にとどまり,疾患ごとに有効な食事介入の明確化が必要である。将来的には腸内フローラ検査に基づく個別化栄養介入(precision nutrition)が期待されるが,現時点では研究段階にある。